コラム一覧へ戻る

お金まわりの記録

値上げの案内文、正直に書いたら常連さんが増えた話

四日市のとある定食屋さんを思い浮かべてください。仕入れの野菜や油の値段がじわじわ上がり、このままでは店を続けられないと悩んでいました。今のままだと赤字が続くとわかっていても、値上げの紙を貼ったら常連さんが離れてしまうのではと、言い出せない夜が続いていたそうです。

結論から言うと、値上げの理由を正直に書いた紙を貼ったところ、常連さんはかえって増えました。理由を隠さずに伝えたことで、お客さんが「応援したい」という気持ちになったからです。黙って値段だけ変えるより、正直に書いたほうが、ずっと信じてもらえます。やり方は三つです。まず、値上げの理由を数字で具体的に書きます。たとえば「卵の値段が去年より三割高くなりました」のように、実際の数字を一つだけ入れます。数字が一つあるだけで、話に重みが出て、言い訳っぽく聞こえません。次に、お店の側の努力も一緒に書きます。「量はこれまでと変えていません」「仕入れ先を見直して工夫しています」というように、頑張っている部分も隠さず添えます。無理をしていないことが伝わると、お客さんも安心します。最後に、感謝の言葉で締めます。「いつも来てくださって、本当にありがとうございます」という一言を置くと、紙全体の印象がやわらかくなります。手書きの一言を添えると、さらに気持ちが伝わりますよ。

もちろん、これで全員が納得してくれるわけではありません。値段だけを見て、何も言わずに来なくなるお客さんも中にはいます。それでも、少し勇気のいることですが、正直に書いた紙は、長く通ってくれる人との関係を、前よりずっと強くしてくれます。数字と気持ちの両方を書くことが、案外いちばんの近道なのかもしれません。

このコラムは、西村利之と山口真が書いています。