引き継ぎ・教える
引き継ぎノートは、完璧を目指すと書き終わらない
長年経理を任せていたパートさんが、来月で退職することになりました。後任のために引き継ぎノートを作ってほしいと頼んだのに、一週間たってもまだ表紙しかできていません。「全部きちんと書こうとすると、どこから手をつけていいかわからない」と本人も困った顔をしています。似たようなことは、ベテランの職人さんや営業さんが辞めるときにも、よく起きます。まとまった時間を取って一気に書き上げようとするほど、かえって手が止まってしまうのです。
結論から言うと、引き継ぎノートは完璧を目指すと一生完成しません。最初から立派な冊子を作ろうとせず、今日困った作業だけをその場で書いてもらえば、それで十分です。やり方は難しくありません。まず、ノートの最初から順番に書こうとしないことです。実際に手が止まった瞬間にだけ、その場でメモを取ってもらいます。「あの取引先への電話は、いつも午前中にかけている」と気づいたら、その場で書きます。「請求書の締め日は月末の3営業日前」のような細かい話も同じです。思い出した順で構いません。次に、書く場所を1冊のノートか、スマホのメモ帳など、必ず同じところに決めておきます。付箋やチラシの裏にバラバラに書くと、後で誰も見返せなくなってしまいます。最後に、辞める前日にきれいに清書し直そうとせず、走り書きのままの状態で渡してもらいます。字が汚くても、実際に困った場面の記録の方が、よそ行きにまとめた文章よりずっと役に立ちます。
ただ、これでも本人が忙しすぎて書く時間が取れない時期はあります。そんなときは、無理に書かせなくて大丈夫です。働きながら口で説明してもらい、そばで別の人がメモを取るだけでも、十分な引き継ぎになります。書ききれなかった細かいところは、後から少しずつ足していけば大丈夫です。
このコラムは、西村利之と山口真が書いています。
