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引き継ぎ・教える

マニュアルという言葉が重いなら、「約束ごと」と呼べばいい

新しく入った人に「これ、マニュアル読んでおいてね」と分厚い紙の束を渡すことがあります。それだけで顔がこわばってしまいます。読む方は「覚えることが多そうだ」と身構えてしまいます。教える方も「ちゃんとしたものを作らないと恥ずかしい」と思うほど、手が止まってしまいます。結局そのままになって、同じことを口で何度も説明する毎日が続きます。何年も同じ注意を口で伝え続けているお店や会社は、四日市のあたりにもきっと多いと思います。

答えは単純です。マニュアルという呼び方をやめて、「約束ごと」と呼ぶだけで、作る方も読む方もぐっと気が楽になります。まず、今までによく起きた失敗や、新しい人が必ずつまずく場面を一つだけ思い出してください。次に、その失敗を防ぐために決めていることを、一行の短い言葉にします。「電話を取ったら必ず相手の名前を復唱する」「お釣りは声に出して数える」というような感じです。最後に、それを紙やふせんに大きく書きます。レジのそばや作業台の前など、みんなの目に自然と入る場所に貼っておきます。分厚い冊子を作る必要はありません。一行の貼り紙が三枚あれば、それだけで十分な約束ごとになります。新しい人には「マニュアルを読んで」ではなく「この貼り紙だけ守ってね」と伝えます。身構えずに、すっと受け取ってもらえます。教える側も、貼り紙を指さしながら話せるので、同じ説明を繰り返す手間がぐっと減ります。

ただし、約束ごとを増やしすぎると、また分厚いマニュアルに逆戻りしてしまいます。本当に困った失敗だけを選んで、多くても三つくらいに絞っておくのがちょうどいいです。細かいことまで全部書きたくなる気持ちはわかりますが、それでは元の重い紙束と変わりません。全部の間違いは防げませんが、よくある勘違いだけでも減らせれば、その日から十分に助かります。

このコラムは、西村利之と山口真が書いています。