変えることとの付き合い方
新しいやり方が続かないのは、意志ではなく置き場所の問題
四日市のある小さな町工場で、新しい在庫チェック表を作りました。朝礼でみんなに配って、書きやすいようにペンも横に添えておきました。最初の三日間はきちんと書いてもらえました。でも二週間たつと誰も手に取らなくなりました。部品が足りないまま、作業が止まる日も出てきました。社長は「うちの若い子は面倒くさがりだ」とこぼしていましたが、原因はやる気の問題ではありません。新しいやり方が続かないのは、それを使う場所が、いつもの体の動きに合っていないだけです。人は忙しくなると、頭で考えるより先に、一番近くにあるものへ手を伸ばしてしまいます。せっかく作った表も、離れた事務所の机に置いてあれば、誰も取りに行かなくなって当然です。ベテランの一人は「わざわざ事務所まで取りに行くのが面倒だ」と正直に話してくれました。
やり方は難しくありません。まず、新しい用紙や道具を、今まで古いメモを置いていたその場所に、そっくりそのまま置きます。この工場なら、部品の棚の前が正解です。棚の上に別の置き場所を新しく作らないことが大事です。次に、古いメモ用紙やペンは、目に入らない引き出しの奥へしまいます。選べる状態を残しておくと、忙しいときは必ず楽な方を選んでしまうからです。最後に、一週間だけ、その置き場所を動かさずに使い続けてみます。場所さえ変えなければ、新しい表を書くことは特別な作業ではなく、いつもの動きの一部になっていきます。体が慣れてきたら、そこから少しずつ自分の使いやすい形に整えていって構いません。
それでも、忙しさが重なる日や、担当の人が休んだ日は、つい元のやり方に戻ってしまうことがあります。紙を書き忘れる日があっても、それは意志が弱いからではありません。自分を責めずに、また同じ場所に表を置き直せば大丈夫です。一度で完璧にしようとせず、まずは置き場所を整えることから、今日にでも始めてみてください。
このコラムは、西村利之と山口真が書いています。
